未来の希望を育てる学校

f:id:sikibali:20191209154848j:plain学生の頃から環境問題に興味があった。


熱帯雨林保全活動をしたいという思いでインドネシアに来た。

テーマは覚えていないけれど学生の時に参加したワークショップでも、社会問題を解決するためには何が必要かという問いに「教育」と書いたのを覚えている。

20年ほど前、「夢は何か?」と友人に聞かれ、「学校をつくりたい。」と答えたのも覚えている。
環境教育ができる学校をつくりたいと。

でも、食べていくことさえも精一杯の毎日の中で、そんな夢もずっと思い出すことなく、ただただ一生懸命頑張った。何とか少しづつ少しづつ自分の生活も整えていけた。

事業が少し落ち着き始めたころ、バリ島のごみ問題をなくそうと作られたボランティア活動に参加するようになる。
現地の学校に行って仲間と啓蒙活動を行ったり、植林キャンプに参加したり、バリ島の環境保護活動などに関してのホームページも自分で作ったりした。
1人でも意識が変わればいいと思い、スタッフを連れて色々な場所へ行き、沢山の人の
話を聞きに行ったが、彼女の意識に何も変化が起こらなかった。

仕事の関係でいくつかの孤児院ともかかわることになり、バリ島の孤児院の実情を知りショックを受ける。
子どもたちのために奨学金制度をつくろうと孤児院側と交渉したが実現しなかった。


そして息子が産まれる。
乾電池と一緒に沐浴させたり、甘味料着色料たっぷりのジュースを与えるベビーシッターさんにショックを受け、息子のために託児所をつくることを決める。
それがRUMAH KECILだ。

朝から夕方まで子供が過ごす場所なんだからと、園舎も古民家を利用したりて木の建物に拘った。食事もオーガニックにして、安心安全な環境で1日中思い切り遊んで過ごせる場所にしたかった。


幼稚園をつくる予定も最初はなかった。
私たちが借りた土地は4アールしかなかったし、園舎を建てるスペースもなかった。
でもルマクチルの幼稚園に進みたい子どもがいるのであればつくらなければならなかった。
後ろの空地を借りれることになったが広さは22アール。
広すぎる、そして借りるお金もない。
でも「借ります」と返事してしまった。


幼稚園の園舎も古民家を再利用。
ツリーハウスもつくって、プールもジャングルジムもつくった。
ツリーハウスは3か月で倒れると言われたけれど、2年近く経った今でもまだ子どもたちのリーディングスペースになっている。
楽しかった。


でもお金は常になかった。
せっかく自転車にエンジンをつけることができて楽になってきたのに、そのエンジンを売ってしまった感じ。
「小学校もつくってよ」と父兄の人に言われたときは
「そんなお金ないですよ」
と取り合わなかったかった記憶。
その時の私にとっては想定外すぎたし、小学校をつくるなんて自分の器じゃないと思っていた。
あれはたしか3年ほど前。


でもそれから本気で小学校をつくりたいと思いだすにはそんな時間がかからなかった気がする。
きっかけは立川市にある藤幼稚園のドーナツ型の園舎を見たことだった。
単純にこんな楽し気な校舎を建てたいと。
子どもたちもこんなところで勉強出来たらいいなぁと。
そして、もうひとつの理由はまた息子のため。


彼は、私たちの育ってきた時代のように、学校でいい成績取って、いい大学に入って、一流企業に入れば間違いなし、といったわかりやすい時代ではなく、正解もない、それも私たちの時代に比べれば数倍、数十倍ものスピードで変化していく時代を生きていかなければならない。
息子の下にいる双子の女の子たちは大丈夫だろう。
女の子はたいてい強く賢いものだから、どんな時代にも合わせ、上手に生きていけると思う。
でも息子はいろんな意味で優しすぎる。
そんな彼のような子どもでも、この先世の中がどんな世界になっても、歩き続けることができる、生き残ることができる心の強い子どもを育てたい。
そんな思いで。


学校の名前はTARUWARA SCHOOL。
TARUWARAはサンスクリット語で「良い木」という意味。
私たちが植えた木が、のびのびとどんどん大きくなり、自由に色々な花を咲かせ、実がなる。
そんなイメージでつけた名前。


幼稚園までのRUMAH KECILも「遊び」を大切にし、根っこを育てることをコンセプトとしているが、TARUWARA SCHOOLでも心の土台となる「非認知能力」を伸ばしていきたい。
非認知能力には、(自己肯定感)(自制心)(社会性)(好奇心)(想像力)(共感性)(主体性)(柔軟性)(回復力)(やり抜く力)などがあるが、学校は子どもたちにそういったスキルという武器を身につけさせ、そして、子どもたちが自分の才能に気づき、自分たちが社会で取り組むべき(問い)を見つけさせる。
そして私が以前丸腰で戦い、諦めた、環境問題や貧困問題など、社会にある様々な問題と戦って、より良い世界にしていく。
そういう子どもたちが毎年10人ずつでも育っていき、社会に出ていけば、この先の世の中を少しづつでもいい方向に変えていくことができるんじゃないか、そんな願いを込めた学校。
未来の希望を育てる学校。


私が理想とする教育ができる学校になるまで、何年も何十年もかかるだろう。
息子もとっくに卒業して、大人になって社会に出てしまっているかもしれない。
それにいつもの事だけれど校舎を建てるお金の目途さえも危ういもの。
でもTARUWARA PRIMARY SCHOOLを来年2020年7月に開校する事に決めた。


多分私はこの先ずーと学校つくりをしているんじゃないかと思う。
20年経っても、30年経ってもずっと。
それは小学校をつくると言うことはそういう事だと。
中学校、高校と続いていく長くて壮大な事業になるという事に覚悟を決めなければならないという事。
これが私のミッションなんだろうなと、骨と皮になるまで学校つくりをしていくんだろうなと。


「学校がつくりたい。」
20年以上に前に抱いた夢を、一生かけて形つくっていくんだろう、これからの私は。